最良の薬は予防 – 固着したシートポストとの戦い
年末迫る中、自転車界の強敵の代表格「フレームと固着したシートポスト」がピットイン。
シートポストの固着はクロモリ製のフレームにアルミ製のシートポストを装着しているバイクでよく起きてしまいます。 これは単なる錆による固着ではなく二種類の異なる金属が接する箇所に雨や湿気などの水分が侵入し、化学反応によって起きる電蝕(電食)という強力な錆のような固着状態なのです。
そのため浸透性の高いWAKOSのラスペネのような潤滑剤を流し込んでも接着度が高いため隙間に入り込みづらく、一晩置いて明日にはスポン!と抜けることはありませんでした。 その後、男手3人でどれだけ目一杯力を込めて動かそうとしてもびくともしませんでした…
電蝕によりこうなってしまったシートポストを取り外す手段はいくつか存在します。
・延長パイプやバイスを使い、力尽くで回す。
→無理矢理行うとフレームが変形する可能性もあるため、やり過ぎは厳禁です!
・バーナーと冷却スプレーで加熱と冷却を繰り返し、アルミとクロモリの熱膨張の差を利用してふたつを剥離させる。
→軽度の錆であれば成功しやすいですが、電蝕の場合は成功率は低いです。
・バーナーでシートポストを炙って溶かす
→アルミに比べてクロモリの方が溶け出す温度が高いため、シートポストだけが先に溶けます。
化学的な話も出てきてややこしくなってしまいましたがどの手段でも、これ以外の手段でも手が掛かることには違いありません。 またバーナーで炙る場合はフレームの塗装が焦げてしまうため再塗装が前提の手段となります。
今回は「再塗装をせず、ひとまず取り除いて欲しい」とのご依頼だったため金鋸などでシートポストを切断していく大掛かりなオペとなりました。

何本も切り込みを入れてプライヤーで内側に曲げる作業を繰り返し、フレームからシートポストを剥がしていくことで最後は引っこ抜くことが出来ました。 この後にヤスリで表面とフレーム内部を整えればオペ完了。
固着したシートポストは何とかして抜ける可能性はありますが、解決策があるから大丈夫ということよりも予防することが重要です。 シートポストを取り付ける時に必ずグリスを塗るのはもちろん、定期的に抜いて古いグリスとフレーム内部に溜まった水を除去して新しいグリスに入れ替えたりして、大切に永く続けられるようにしていきましょうね!
※2019年12月追記
全ての固着したシートポストが取り外せる訳ではありません。
また、取り外し作業には時間を要するため基本的にはお預かりでの作業となります。 ご了承ください。